醸造12社 魅力発信へ団体発足
県内のビール醸造12社が9日、業界団体「滋賀クラフトビールアソシエーション(SCBA)」を発足させる。地元産素材を使ったクラフトビールや地域振興に取り組む個性的な醸造家らと酒造大手がまとまり、情報交換などを通じて品質向上や国内外への魅力発信に力を入れる。(青山大起)
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県内ではクラフトビール醸造の参入が相次いでおり、国税庁の統計では、県内のビールと発泡酒の製造場数は3月時点で17社。2015年は4社しかなく、10年間で4倍以上に増えている。大津税務署によると、クラフトビールの団体設立は関西では大阪府に次いで2例目で、京都府や奈良県でも同様の動きがあるという。
ただ、醸造所が増える一方で、課題もある。SCBAの会長に就任する「ツーラビッツ・ブリューイング」(近江八幡市)のコレット・ショーンさんは「クラフトビールは値段が高いイメージがあり、気軽に安心して飲める環境が整っていないのが現状」と指摘。また、日本は海外に比べて醸造技術を学ぶ場や機会がなく、「醸造家の知識や技術がバラバラ」という。
そこで、県内の醸造所がまとまり、昨年12月頃からSCBAの設立を計画。ビールの品質向上や醸造家のスキルアップのために定期的にセミナーや研修会を実施していくことにした。醸造所間で連携を強化して、イベントやSNSを通して認知度を上げ、県内で多くの人がクラフトビールを楽しめる環境づくりも目指す。
SCBAには酒類大手「キリンビール」の滋賀工場(多賀町)も加わる。「『一番搾り』だけではビールファンは増やせない」と同工場の高田瑞生係長。加盟はコレットさんに誘われたといい、「お客様に高品質で安全安心なビールを届けたいという思いは一緒」と語る。広大な生産工場を教育の場として提供するなどして支援する予定で、「我々としても大きな挑戦。お客様の多種多様なニーズに応えていきたい」と力を込める。
3月27日には県庁で記者会見を開き、設立の趣旨とともに、第1弾となる取り組みなどを発表。今月9~18日を「滋賀クラフトビールウィーク」として、期間中に酒販店などで購入した県内醸造所のクラフトビールの写真とともにX(旧ツイッター)やインスタグラムなどのSNSで「#滋賀CBA」のハッシュタグをつけて投稿すると、抽選でビールをプレゼントする。18日には、滋賀のクラフトビールを知ってもらうために、京都ポルタ(京都市下京区)にあるクラフトビール専門店で、加盟12社の商品を一度に味わえるイベントも開催する。
SCBAの公式ロゴは、グラスに入ったビールがモチーフで、中央には参加する醸造所と同じ12の泡で琵琶湖が描かれている。
コレットさんは「まずは醸造技術の全体の底上げをして、ゆくゆくはSCBAでオリジナルのビールを造るなど、滋賀の業界を盛り上げていきたい」と意気込んでいる。
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